教育長に答弁を求めます。
〔
遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 成人年齢の引下げに伴う投資の授業について、5点のお尋ねにお答えいたします。
1点目、まず授業の内容についてですが、高等学校の公民科、家庭科の時間に預貯金、保険、株式、投資信託など金融商品のメリットやデメリットなどの資産形成について学習を行います。投資以外の金融に関する項目としては、クレジットカードの利用等、消費者としての権利と義務について学習を行うことが
学習指導要領に示されております。
2点目の年間の授業数等ですが、熊本市立学校の場合ですが、第1学年の公民科で消費者としての意識を高める授業を、また第2学年までの家庭科で契約に関する実践的、体験的な授業を、それぞれ年間70時間の授業のうち、1時間から2時間程度実施する予定としております。
3点目に教員研修ですが、熊本市立高校については、文部科学省、金融庁などの解説動画の紹介、
学校訪問指導、金融証券業界の講師派遣事業を活用した教員研修を継続して行う予定としております。
4点目の
学習指導要領に盛り込まれた経緯ですが、成年年齢の引下げに伴い、保護者の同意なく金融商品の購入ができるようになることから、高校生の段階から消費者としての知識と実践力を身につけるために、
学習指導要領に盛り込まれたものです。
5点目の新学期を控えた現在の課題についてですが、生徒の意識や中学校までの学習等の実態を把握し、実社会で活用できる授業にするための準備が必要であると考えております。引き続き、高校への情報提供等の支援を行ってまいります。
〔14番
吉村健治議員 登壇〕
◆吉村健治 議員 改正民法が施行される4月1日より、成年年齢が18歳に引き下がることは、明治初期に成年年齢が二十歳と定められて以来、146年ぶりの大改革であります。様々な場面で自分の意思によって選択、決定ができるようになりますが、反面、大人としての行動に重い責任が生じます。
保護者同意のない契約は取り消せるという現民法の規定は適用されず、ローン契約の締結や金融商品の購入により重い債務負担や悪徳商法等の
消費者トラブルに遭う危険性が高まり、それが心配されております。
そういった負の一面をしっかりと学び、予想されるトラブルを回避できるよう、そのすべを知る授業となればよいのですが、1年間で一、二時間というほんの僅かな時間の中で、投資の勉強が単なる金もうけの知識取得のみに終始しないようにしなければなりません。
あわせて、授業を行う教育現場についても言及すると、文部科学省の教員不足に関する全国実態調査によると、今年度、当初配置された教員数は予定数に比べ全国で2,558人も不足していたということで、学校全体の5.8%、1,897校が該当するという厳しい現実が改めて数字として判明いたしました。
文部科学省は、教員不足について臨時教員などが確保できなかったケースと定義していますが、
定数不足解消対策として、もともと少人数指導やチームティーチングのために確保していた教員を再配置するなどしたほか、教頭などの管理職が担任を兼務するなど、教育現場は混乱を来しています。文科省は、教員不足による授業の停滞といった深刻な自体は把握していないとしていますが、全く現場を知らないのではないのかと思います。
私が現場の先生から聞いた現状は、教員不足による弊害は以前からも続いており、コロナ禍で教育環境がさらに激変したことで、ただでさえ手いっぱいで
お忙しい教員が授業の準備や子供と接する余裕を失うなど、通常業務に支障を来し、過酷な勤務実態により、心と体をむしばむことで休職や退職を余儀なくされる教員がますます増えるのではないかと大変危惧されておりました。
こういった過酷な勤務実態が敬遠され、
採用試験競争率が過去最低を記録する中、定数見直しや配置の仕方、給与体系等を時代に合わせて抜本的に見直すなど、その環境改善が必要不可欠です。退職教諭の方や休眠教員など、経験のある
教員免許所持者などの再任用や、教師が担う仕事の中で教員免許がなくてもできる範囲で、外部の人材の助けを借り、現職の負担を減らすことで授業をより実りのあるものにし、本来の授業研究や生徒と向き合う時間が確保できるようにお願いしたいと思いますし、現職教員の皆さんが胸を張って堂々と教職のすばらしさを口にでき、子供たちにとってもよい環境の下、学べるようになるときが来るよう、教育委員会の方々にもさらなる改革の断行を要望いたします。
次の質問に移らせていただきます。
民生委員・児童委員の方々の事故と成り手不足の問題に関してお話しさせていただきます。
民生委員・
児童委員制度は、制度制定から100年余り、献身的なボランティアの方々によって支えられておりますが、昨年夏の長崎における記録的豪雨時に、独り暮らしの高齢者の方の依頼で家に向かった70歳の民生・児童委員の女性が、水害に巻き込まれて亡くなるという痛ましい事故がございました。
当時、警戒レベル5の緊急安全確保の中、怖いから来てほしいとの高齢者からの連絡を受け訪問、その後、近くの用水路付近でお二人とも亡くなっているのが発見されました。
こういった悲劇を受け、厚生労働省は民生委員さんたちに対し、災害時には自身の安全を優先し、避難情報が出ている間、要支援者の見守りなどが必要な状況にあっても自治体に対応を任せるようにとの緊急通知を出したとのことですが、いずれにせよ、地域住民のため強い使命感や責任感で行動された結果だと思うと本当に悲劇です。
あらかじめ関係者間でそれぞれの役割分担を明確にする必要があります。
民生委員自体の高齢化が進む中、御自身も地域の一住民であって、災害対応の専門家ではありません。各個人の使命感や責任感に甘えることで、過度の負担が生じ、結果として、その命を賭してまでも責任を負わせています。
全国民生委員児童委員連合会のガイドラインとしては、自らと家族の安全を最優先に考えること、地域住民や地域の団体と協力し対応すること、自治体と協議して災害時の情報共有の方法をあらかじめ決めておくことなどを挙げておりますが、非常時において、地域で上手にみんなで連携し、対応し、二度とこういった悲劇を生まないようにしなければなりません。
そこで、熊本市の事故の現状と対策、利用者からの暴力暴言に対する対応、活動を補償する保険の有無、現在の定数に対しての熊本市の不足数、その対策、取組はどのようにしてくのか。また、災害など不測の事態における行政と委員の今後の連携をどのようにされていくのか、民生・児童委員に対して期待すること、また行政の役割について、
健康福祉局長にお聞きいたします。
〔
石櫃仁美健康福祉局長 登壇〕
◎石櫃仁美
健康福祉局長 民生委員・児童委員の御質問に順次お答えさせていただきます。
初めに、本市の民生委員・児童委員の活動時の事故につきましては、主に移動中の転倒によるものでございまして、令和元年度10件、令和2年度2件、令和3年度は1月末までに4件の報告を受けております。
また本市では、活動中に受ける暴力暴言による
精神的ストレスなどのリスクを未然に防ぐため、全体研修会などの機会を捉え、安全確保等について注意喚起を行うとともに、緊急時における連絡体制についても改めて周知してまいります。
次に、活動中の負傷等につきましては、全員に御加入いただいております熊本市
ボランティア保険及び
全国民生委員児童委員連合会の活動保険から、治療費や見舞金などが支給されております。
次に、委員の不足数につきましては、令和4年1月1日現在で、定数1,466名に対し103名の欠員となっており、欠員補充のため、
民生委員児童委員協議会と連携し、推薦していただきます自治会等への呼びかけを行いますとともに、新たな人材の発掘や若い世代の方への理解促進などの取組も進め、成り手不足の解消に努めてまいります。
次に、不測の事態における行政と委員の連携につきましては、昨年8月の長崎県での事故を受け、本市におきましても直ちに、全ての委員の皆様方に対し、御自身の安全を確保された対応を行っていただくよう、文書の発送や理事会での周知を行ったところでございます。今後も熊本市
災害情報メール等の登録勧奨を行いますとともに、日頃から
民生委員児童委員協議会と
防災担当部局等との連携を深め、委員が相談しやすい環境づくりに努めてまいります。
最後に、委員の活動は、高齢者の方や育児・子育てに関する日常的な支援、相談など多岐にわたっており、地域福祉の増進に重要な役割を果たしていただいていると認識いたしております。本市といたしましても、
民生委員児童委員協議会や熊本市
社会福祉協議会と連携し、今後も委員、お一人お一人の活動を支えてまいります。
〔14番
吉村健治議員 登壇〕
◆吉村健治 議員 今、局長に熊本市の事故発生件数などを教えていただきましたが、全国においては、自宅訪問や相談活動中の負傷事故が2020年度までの7年間で3,200件以上発生し、民生委員の65歳以上の割合が約70%に上る中、移動中の転倒や転落、交通事故が増加しております。2016年度時点での民生委員の平均年齢は66.1歳で、25年前から比べると5歳以上高齢化しており、成り手不足が深刻化していることは御存知のとおりです。
定数に対し、全国で1万人が欠員で、熊本市では103名の欠員が報告されると言われていましたが、それが慢性化しております。事故件数は、先ほど御紹介いただいた保険が実際に適応された事案数で、その保険は、東日本大震災時に民生委員の方々56名の方が避難誘導活動中に不幸にも亡くなった痛ましい事故を受け創設され、保険制度開始以降、転倒し、頭部をブロック塀に強打するなどの死亡事故が6件、骨折1,320件、打撲863件、捻挫407件、創傷222件、犬にかまれた事案137件などが報告され、保険請求をしなかった事故件数も多くあることが容易に想像でき、実数はさらに多いかと思われます。
超高齢化が進む今だからこそ、地域住民に身近で行政とのつなぎ役になる民生委員が必要であることから、民生委員をいかに確保していくかは、これからも大きな課題であり、なおかつ難題です。自然災害の激甚化や頻繁化によって、新たな課題が発生する中、制度設計を見直し、不幸な事故をなくすことで安心して民生・
児童委員業務が遂行できる環境整備を強く求めます。
これまで、住民に寄り添い、住民目線に立った活動を行ってきたからこそ、住民の信頼を得ることができたのだと思います。この100年間、常に住民の身近な相談相手であり、見守り役であったこと、行政の協力者として福祉制度を効果的に機能させるつなぎ役であったこと、時代に先駆け、その時々の福祉課題の解決に自ら取り組んでこられたこと、それが昨今、公的な支援で対応できない日常的な支援が増加したそうです。委員の活動上、住民の
プライバシー尊重とのバランスや自治体からの個人情報提供の不足が悩み、苦労であり、特に、災害時要援護者支援員への取組が民生委員さんの過度な負担につながっているそうです。
国が
地域共生社会実現を推進する中、分野を超えた包括的、総合的支援を重視していることは理解ができますが、民生・児童委員の方々の範疇を超える仕事量は、結果として地域力や住民サービスの低下を招くことにつながります。
熊本市としてもこの問題に今後も力を入れていただくことを強く要望して、次の質問に移らせていただきます。
地域猫適正管理推進事業に関してお話しさせていただきます。
野良猫対策はいずれの自治会においても頭を悩ます問題ですけれども、野良猫が増える大きな要因は、無責任な猫の飼い主の方々が適切な
不妊去勢手術をせず、屋外飼育や飼育放棄をした結果です。
猫はとても繁殖力が高く、早い猫だと生後5か月程度で妊娠し、すぐに何十匹にも増えてしまうので、飼い主が飼い始めに去勢手術等をすることが飼い主として当たり前の責任でございますけれども、今のところモラルに頼ることはかなっておりません。
そういった中で、今までと視点を変え、地域住民と熊本市が力を合わせて、猫を適切にお世話、管理する新たな取組を始められたとのことですが、この取組に至った経緯や現在の取組、これからの事業計画を教えてください。
また、本事業に加えて、
公益財団法人どうぶつ基金が全額負担する
TNR地域集中プロジェクトに参加し、協働でTNR事業を進めるとしていますが、その趣旨を教えてください。
健康福祉局長の答弁を求めます。
〔
石櫃仁美健康福祉局長 登壇〕
◎石櫃仁美
健康福祉局長 初めに、取組に至りました経緯につきまして、
地域猫適正管理推進事業につきましては、近年、野良猫に関する相談件数が年々増加し、平成29年度の600件から令和2年度には1,700件に増加している状況を踏まえまして、地域住民の皆様が猫による被害の現状を認識し、野良猫を排除するのではなく、餌やふん尿の管理、
不妊去勢手術の実施等により適切に管理することで、野良猫によるトラブルをなくすための試みとして、今年度から取り組んでいるところでございます。
取組状況でございますが、現在、2つの地域でモデル事業として開始しておりまして、12月時点で合計40頭の
不妊去勢手術を行っております。地域が一体となって猫を管理することにより、環境美化や地域のコミュニティの活性化などの効果が見られる一方、新たな猫の流入や活動の継続性が課題となっているところでございます。
次に、今後の計画等につきましては、来年度は地域猫活動を実施する地域を2か所増やし、支援を継続するとともに、
公益財団法人どうぶつ基金と協働にて、来年度1年かけて、市内の野良猫に
不妊去勢手術を実施し、生まれてくる子猫を減らす事業でございます
TNR地域集中プロジェクトを行うこととしております。
今後は、これら2つの事業の効果や課題を地域の御意見とともに検証し、これからの地域猫活動への取組について検討を進めてまいりたいと考えております。
最後に、議員御案内のとおり、犬猫の殺処分ゼロの実現のためには、市民の皆様の御理解と御協力は不可欠でございます。現在活動していただいている市民の皆様に感謝申し上げますとともに、これからも地域住民の皆様と協働で問題の解決に取り組んでまいりたいと考えております。
〔14番
吉村健治議員 登壇〕
◆吉村健治 議員 お答えいただいたように、野良猫に関する相談件数が急増している実態を踏まえ、地域猫活動を行う団体や個人に対し、本市として適切な指導、アドバイスが継続的にできるようになると、子供や大人の道徳心や動物福祉の意識につながることはもちろん、動物たちの幸せと人間の共生のために、人の感情に基づく判断だけではなく、科学的知見を基に、動物たちの苦痛をなるべく取り除いてあげる好循環につながる取組となります。
地域猫適正管理推進事業のような地道で客観的かつ
科学的アプローチが大切で、地域住民の皆様の御協力の下、行政のバックアップの継続性が担保されれば、とてもよい試みだと評価いたしたいと思います。
ここで、この事業に先駆的に取り組んでいる
北部東小校区鶴の原自治会の取組を御紹介いたします。
当自治会では、市政だより令和3年2月号にこの事業が紹介されると早速、懸案事項でもあった野良猫問題の改善に向けた取組を役員で打ち合わせ、検討され、問題意識を持つ方々からの聞き取りを行った上、その2日後には回覧板にて
適正管理推進事業の紹介と町内で取り組まれるかどうかの可否を打診され、同時に、愛護センターに相談、打合せを行い、自治会総会にて事業開始を提案され、承認後、補助金申請等の手続を遅滞なく行い、地域住民に対して地域猫活動に関する理解と適切な対応の御依頼を再び回覧板にて周知するなど、スピード感を持って取り組まれました。
もちろん、同時並行として猫の捕獲管理で汗をかき、動物病院での
不妊去勢手術を手弁当も含め、地道に行うなどの活動を精力的にされてきております。結果、
先駆的自治会として、地元紙からの取材や北区長、他校区自治会からの視察、来訪を受けられ、その取組や状況、方法、課題などを伝えるなど、熊本市民への啓発、啓蒙活動の大きな一助になったのはもちろんのこと、何よりも地域猫が適正化されたことで、地域住民から大変感謝されております。
そういった中においても、自治会長の強いリーダーシップと協力的な住民の方々によって支えられている活動には、多くの課題もございます。自治会作成の
事業状況報告書によると、今、活動は特定の協力者で行っているが、継続的活動を行うためには、今後は、自治会員全員で積極的に事業に関与するような体制づくりが必要で、本事業の特性として、単年度だけで解決するものではなく、一自治会単位では費用面での負担も大きいため、
市民リサイクル活動助成金と同様、
事業申請団体に対し、実績に応じた実費補填の補助金が支給できる体制づくりをお願いしたい。
また、一町内会単位のみでの活動では、地域間をまたいで生活圏とする猫たちの適正な管理は不可能とのことですので、周囲の自治会を巻き込んでの取組や仕組みづくりを市がリードしてほしいとの御要望がございます。取組を行う自治会が属する
校区自治協議会に対して、積極的取組を御案内していただければと思います。
いずれにせよ、当事業に関し、日々努力をされている方々に感謝申し上げます。肝は継続性です。モデル地区の取組を精査されるとのことですが、検証の上、取り組まれる自治会が安心して今後も活動ができるよう、財政的予算づけも含めてきちんとした体制を取っていただくよう重ねてお願い申し上げ、次の質問に移ります。
今まで一般質問で何度か取り上げさせていただきましたが、
ヤングケアラーの問題で多少進展がございましたので、その御紹介と御質問をさせていただきます。
ヤングケアラーに関して、マスメディアで、私の知る限り最初に取り上げ、問題提起を行ったのは、毎日新聞の特別報道班の取材班でございます。
ヤングケアラー幼き介護と題する特集を継続的に行われ、このコロナ禍で取材が大変難しい状況下にもかかわらず、腰の重い厚労省や私たち市民に対し、その実態を知らしめ、警鐘を鳴らしてもらいました。
国民生活基礎調査では、子供の7人に1人が貧困状態であるという事実が公表されましたが、経済的な貧困だけではなく、それに起因して子供たちにとって過重な日々の連続的労働を余儀なくされていること、また、その人生をいや応なく搾取されていることが判明いたしました。
熊本県下の
ヤングケアラーに関する初の調査が昨年、中学2年生、高校2年生に対して行われ、先日公表されましたが、その調査結果について、また結果を踏まえた今後の取組について、
健康福祉局長にお尋ねいたします。
〔
石櫃仁美健康福祉局長 登壇〕
◎石櫃仁美
健康福祉局長 本市も協力して実施されました熊本県の実態調査の結果によりますと、世話をしている家族がいると答えた、いわゆる
ヤングケアラーは481人で、中学生は3.3%、高校2年生は2.0%でございました。
また、自分が
ヤングケアラーであることを認識している子供は、全体で212人、1.2%でございました。
全国の調査と比較いたしますと熊本県における
ヤングケアラーの割合は低い結果ではございましたが、当事者に自覚がないケースも想定されますことから、学校や地域等、子供の近くにいる大人だけでなく、子供自身も早期に気づき、相談等の適切な支援につながる環境を整えることが必要でございます。
そこで、令和4年度から
ヤングケアラーに対する認知度の向上のため、さらなる周知、啓発を行いますとともに、関係機関との連携を強化するため、新たに行政、学校、地域、介護事業所等の関係機関をつなぐ
ヤングケアラー・コーディネーターを配置いたしまして、子供が社会から孤立することのないよう、早期に発見し、寄り添った支援に取り組んでまいります。
〔14番
吉村健治議員 登壇〕
◆吉村健治 議員 お答えいただきました数字以上に大切なことは、一人でも助けを求める子供がいたら救える体制を行政がしっかり構築するということであります。
昨年、神戸市において、こども・
若者ケアラー相談支援窓口が全国の自治体に先駆けて設けられ、18歳未満に限らず20代の若者ケアラーも対象として含め、社会福祉士らが対応されております。既に多くの相談が寄せられる中、当事者以外の相談が圧倒的に多いらしく、教育関係者からの相談が多くを占めているそうでございます。
また、大阪府教育委員会においては、支援強化のため、福祉の専門家として学校や家庭での悩みを聞き取るスクールソーシャルワーカーらに助言する指導的な役職を2022年度に新設する方針を固めたとのことです。家庭や進路など悩みを早期に把握し、本人の事情に合わせた対応に努め、これらを含めた支援強化策として、約7,100万円を一般会計当初予算に盛り込むとのことです。
果たして、熊本市の体制は今どうなっているか。先ほどの局長答弁のとおりで、まだこれからでございます。助けてとの悲痛な叫びや声なき声を確実に拾い上げ、子供たちが必要な情報にアクセスでき、助けを求めるすべを知ることができる環境整備を早急につくり上げていただきたいと思います。
厳しいことを言うようですが、現状を放置することは、家族を介護する子供のことを美談で終わらせ、子供たちが過度の重責や負担を負い、自分の家庭の特殊性を恥と感じている等の幼心に付け込んでいるに等しいと言わざるを得ません。現状が続けば、負の連鎖が続き、それが常態化します。自助のみで何とか生き延びて大人になっても、公助に頼るすべを知らず、また、それが当たり前と思い込むことで、心の病やひきこもりなど、悪い意味で深化いたします。
そもそも、子供は、親だけでなく社会全体で保護されるべきで、子供らしい日常生活が奪われ、自分の未来を思い描く余裕のない子供たちを救うことは、大人の義務です。耐えながらも自分の時間を持てない子供たちに対し、学習支援を行い、ペアサポートなどのケアの経験を話し合える場を設け、孤立を防ぎ、認知症や精神疾患を抱える家族をケアするケアラーも多くいることから、介護保険や福祉サービスなどに最短でつなぐことで、ケアを社会全体で担い、押しつけや独りよがりではない、本当の意味でのサポート体制が一日も早く待たれております。
調査結果を基に、県と協力して子供が担っているケアの実態の解像度を上げて、把握分析し、過去の常識にとらわれず、近代日本の家族領域に起きた大きな変化を鑑み、人口減少、少子高齢化社会の真っただ中にある日本で、ケアする人のケア、ケアする人をどう支えていくかが、とても大事だと思います。
未成年のうちは、大人と同じ責任を持たなくてもよく、親や社会に保護され、面倒を見てもらうことが当たり前の時期です。大人の価値観を気にすることなく、わがままに苦しい現状から逃げ出す権利があり、やりたくないことはやりたくないと言ってよいのです。必死で、家族のために頑張ることも大事ですが、もっと大人を頼ってほしいと思います。
その意味でも、適切なサービスにつなぐ役割の専門家である
ヤングケアラー・コーディネーターを熊本市が新年度から配置することは、まず始めの一歩として評価いたしたいと思います。市政だよりなどを通じて、広く市民に対して周知し、まずは広く知ってもらい、大人の気づきから、子供たちが貴重な時間を有効に、普通に使えるような体制づくりを重ねて求めたいと思います。
次の質問に移らせていただきます。
内密出産について、2022年度から新聞紙上でよく取り上げられておりますが、そのことに関して御質問させていただきます。
西区の慈恵病院が2019年より独自に取り組む、いわゆる内密出産で、昨年生まれた子供について大西市長は「戸籍がないことで、子供に不利益がないよう最優先で考えなければならない。速やかに対応する必要がある」と語り、また、慈恵病院が親の欄を空欄のまま、出生届を出すことが法律的に抵触するかどうかとの慈恵病院からの法務局への質問状に対し、出生届の提出によらずとも市区町村長の職権により戸籍の記載ができると回答したことを受け、市長職権をもって戸籍を作成する旨、発言されました。
いわゆる内密出産が法制化されていないことを理由に、母子の未来が危険にさらされるとしたら本末転倒であることから考えると、内密出産の是非はさておき、子供の安全な出生と保護という観点からは、今までの国や熊本市の姿勢、その経緯を考えれば、様々な問題解決の第一歩として大変よかったと思います。
ただし、今回の大西市長の英断は、法制化なしには今後大きなハードルが待ち構えております。総理の発言からも分かるように、原則論に終始する国に対し、いかに内密出産に関する理解を深めさせるのか、また、知られたくない、自分では育てられない、行政に相談したくないとする、既存の社会システムやセーフティーネットではこぼれ落ちてしまいそうな状態にある母親に起きる様々な問題や事件、それを一つでも減らしたいと願いを持って取り組む慈恵病院を孤立させないように、いかに速やかに法的根拠を示し、普遍性を持たせるのかお尋ね申し上げます。
まず、現行法において、母親の匿名性、子供の処遇や出生時情報の取扱い、その情報管理など、保護の在り方について、また、内密出産の背景には、予期せぬ妊娠や若年妊娠、家庭環境や関係性の問題等、女性が一人で抱え込み、周りから孤立する妊婦の姿がありますが、今回の事例等を踏まえ、現行法における取扱いについてお尋ね申し上げます。
内密出産に関する法整備について、大西市長にお尋ねいたします。
〔大西一史市長 登壇〕
◎大西一史 市長 予期せぬ妊娠で悩む妊婦への支援については、母子の命を守ることが最優先であり、匿名での相談や産前産後の母子の居場所の確保などの支援について、広く周知し、女性が抱える課題解決のために、早い段階で相談支援につなげ、孤立を防ぐことが重要であると考えております。
次に、内密出産における子供の処遇については、児童福祉法に基づき、子供の最善の利益を図ることを念頭に、乳児院や里親への委託など、児童相談所が措置を行うことになりますが、子供の出自に関する情報の管理、開示の方法、時期等の適切な取扱いなどについて課題を整理する必要がございます。
先般、国会においても、慈恵病院が行った内密出産は、現行法でも対応が可能であり、法整備については課題を一つ一つ乗り越えながら慎重に議論を深める必要があるとの認識が示されました。本市といたしましては、現在、慈恵病院と協議しながら、課題の整理を行っており、今後、国に課題への対応について助言を求めてまいります。
また、内密出産において、予期せぬ妊娠で悩む人々の救済と生まれてくる子供の権利の両立を図るためには、社会的合意に基づき、国の責任において法整備がなされることが必要であり、引き続き、法整備を国に要望するとともに、議員立法も含め、働きかけを行ってまいります。
〔14番
吉村健治議員 登壇〕
◆吉村健治 議員 厚生労働省の社会保障審議会児童部会の専門部会報告書では、2019年度に把握した児童虐待の犠牲者57人のうち、28人がゼロ歳児であり、出産当日の死亡が9人、1か月以内が2人、望まない妊娠をした女性をどう社会がケアしていくかが悲劇を防ぐとりでです。市長が新聞社の取材に対し、「どんどん内密出産を進めようということではない。子供を育てられない女性の課題解決には、行政が関わらないと無理な部分がかなりある。女性を孤立させない体制を病院と一緒につくっていくことが重要で、病院との協議を進め、徐々に輪を広げて、全国の関係者とともに制度をつくっていきたい。一自治体、一病院だけの話に終わらせてはいけない」。この一連の市長の御意見には大いに賛同するところでございます。
議論を活発化させ、予期せぬ妊娠や孤立出産の様々な問題を日本人全体で、我がこととして捉え、考え、共感していく土壌をつくり、経済的困難や若年などの理由で子育てに困難を抱える可能性のある特定妊婦など、様々な産前産後母子支援をめぐる難問に取り組み、対応していただきたいと思います。
法制化は必然です。現状では、将来、首長が変わればその都度、その判断を仰ぐ形になりかねません。救われる母子が救われない可能性が残されます。国を動かすのは国会議員ではなく、現場を預かり、実情を知る地方自治体の長だと思います。
先月25日の衆議院予算委員会において、参考人として出席された慈恵病院の蓮田院長は、内密出産初事例について詳細な経過を報告された上で、悲惨な現実を何とか阻止しなければならない、軽度の発達障がいや知的障がいのある方が内密出産になりがちな事例もあり心配していると訴えましたが、総理は慎重に議論を進める必要があると述べ、法制化に向けては後ろ向きとも取れる発言をされております。
もちろん、この問題に関しては、市長答弁のとおり様々な課題があり、一つ一つ丁寧な議論が必要ですが、これからも大西市長がリーダーシップを取り、命とその尊厳を守る問題について、世論と社会的合意形成を醸成し、法制化を早期に実現されるための国への取組を粘り強く行っていただくよう要望し、次の質問に移ります。
最後の質問をさせていただきます。
平和首長会議についてと題を書いておりますが、昨今のウクライナ問題も含めて御質問させていただきます。
核兵器禁止条約の発行から1月で1年を迎えましたが、新型コロナウイルス感染症等の影響等で、今年行われる予定であった核拡散防止条約再検討会議や核兵器禁止条約締約国会議などが相次いで延期に追い込まれたことは非常に残念ですが、国境を超え、多くの平和を愛する若者が声を上げ、熊本市においても高校生平和大使の皆さん方などが地道に活動されていることはすばらしく、誇らしいことであります。